Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

どうすれば戦争を起こさずに済んだか

今週を振り返るとこのテーマかな。

フロムとアラン

フロムを読んでアランを読んだ。 テキスト論として読みましたが、 共通点はそこだけではありません。 なぜ人は第一次大戦を引き起こし、第二次大戦を繰り返してしまったか。 どちらの哲学もそこに関わっています。

アランが書いていることが染みるわけですよ。 軍隊では侮辱され、虫ケラのように扱われ、 心のうちに憎しみを育むように指導される。 そしてその憎しみの捌け口が「敵」に向かうように仕向けられる。

考えてみれば、見も知らずの人たちを殺すのだから 「普通の精神状態」では兵隊になれません。 しかも戦場で死ぬことを「美しい」と感じる感性も必要になる。 とても人工的なシステムがそこにあります。

これは「奮起させる」や「士気を高める」と言われる。 現代でも会社や学校で「美徳」とされ使われてますね。 「バカにされたら、なにクソとやる気を出すものだ」という人間観がある。 パワハラ体罰が蔓延する口実です。 憎しみの捌け口を自分より弱い者に求めているだけなのに。

そもそも「やる気」が何か、わからない。 「殺る気」なのですか、それは。 怒りをエネルギーにしないと得られないものでしょうか。 屈辱感で生まれる意欲は歪つです。 これは『まどか☆マギカ』のテーマだなあ。 「負の感情エネルギーほど効率のいいエネルギーはない」という インキュベーターのロジックですね。

正義の名目で戦わせて、絶望を味合わせると、 良質のエネルギーが安価で手に入る。 それで別の宇宙が潤う。 この宇宙は破滅するけど、 それは彼らが選んだのだから自業自得。 後のことは知ったことじゃない。

とはいえ、誰かを「消失点」とする『まどか』の解決策もどうなんだろう。 ひとりの自己犠牲によって均衡が回復される。 仏教の菩薩行のような話だけど、 それで維持される世界は「平和」と呼べるのだろうか。 で、ほむほむは悪堕ちせざるを得ない。

ちょうど『ダンダダン』もそのテーマですね。 人身御供を要求する「平和」。 これもやはり憎しみを蓄積してしまう。 フロムが言う「人をモノとして扱う倫理」。 それは袋小路に陥るようにできている。

あの戦争

次に読んでいるのがこれ。 『あの戦』です。

第二次大戦のどの時点でどういう決断をしていたら、 日本は敗戦せずに済んだか。 そうすると、中国に攻め行った日中戦争から考えないといけないし、 日中戦争を考えるには満州事変に遡らないと理解できない。

その満州事変は1929年の世界恐慌が関係あります。 世界的にインフレが起こり、欧米が高い関税をかけて、 自国経済を守ろうとした。 すると「植民地を持つ国」と「持たざる国」の格差が生まれ、 「持たざる国」である日本は鉱物資源や石油を確保するために 満洲朝鮮半島を植民地化する政策を採用した。 これが発端です。

どこぞの国がまた関税をかけてきますからね。 実のところ、現代は戦前と同じ状況にあります。 資源を持たない日本の選択肢は、 すでに戦前の政治家たちが考えていました。 別に大東亜戦争に突入する必要はなかったし、 アメリカに挑発されても真珠湾を攻撃せずに済んだ。 選択肢はあったのに最悪のシナリオを選んでしまった。

今読んだ範囲で魅力的なのは石橋湛山かな。 石破総理がよく参照する政治家ですね。

石橋湛山の主張は「速やかに植民地を解放し、自由貿易に移行すること」。 植民地の維持に軍事力を使うのはコストがかかります。 資源のないのが問題なのだから、そこは貿易で補えばいい。 日本が率先して植民地を手放せば、 欧米の植民地になっている国々でも独立の機運が高まるだろう。 そうした国々にも門戸を開けば日本が世界に先んじることができる。

戦後日本は、この戦略で高度成長期を支えてきました。 朝鮮戦争による特需はあったものの、 アメリカの言うまま自衛隊を「派兵」していたら また焦土になったでしょう。 アジアもアフリカもどんどん独立したし 「植民地を作らない」はいい方針です。

今回も自由貿易を維持するのがポイントかな。 アメリカ以外の国はどこも困っているから 賛同を得るのに問題はなさそう。 資源を持たない国が「鎖国」するのは得策じゃないですね。

相手に敬意を払いながら交易するのが 「取り引き」です。 「ディール」の意味を間違えてはいけない。 屈辱感で相手をコントロールする戦略に乗ってはいけません。

まとめ

オカルンの表情がどんどん良くなってきている。 男らしい。 ジェンダー的な意味ではなくて、男らしい。 ほんと、こういうのを「男/女」ではない言葉で語れるようにならないとなあ。 「キンタマを持たない」がこの漫画の象徴だから。

もちろん、モモは初めから男らしい。 勇敢であり、守るべきものを間違えない。