面白かったけど不満も残る。
アクターネットワーク理論
伊藤先生の連載の最終回。
アクターネットワーク理論のさわりを解説してくれていて参考になりました。
まとめると
「心は人と人との間にある」になるかな。
心理学を「脳の外」に持ち出すというか、
ノードよりリンクを見るというか、
関係性に視点を移すための言葉に溢れている。
でもそれなら構造主義とどう違うのか。
関係性の中で「こころ」が現象するというのなら、
すでにお釈迦さまが言ったことじゃないか。
「こころ」を「情報」と読み替えれば、
情報工学で研究も進んでいる。
そこにアクターネットワークを持ち出す意義はなんだろう。
そういう疑問も残ります。
要素還元主義と比較してアクターネットワークの独自性を示そうとしても、
すでに要素還元主義自体がいろんな場面で相対化されているから輪郭がぼんやりする。
むしろ他の関係論との比較で差異を明らかにする。
そうした入門書を期待しています。
ハンス少年
賢馬ハンスのエピソードを読んで
「これ、フロイトが知らないはずないな」と思いました。
フロイトが子どもの頃にベルリンで流行った。
しかものちの実験心理学に影響を与えている。
彼が「賢いお馬さん」の噂を聞かなかったとは考えられない。
としたら、なぜ「ウマ恐怖」の事例に「ハンス」という名前を選んだんだろう?
そこが疑問に思いました。
一般にはフロイトがエディプス複合の具体例として
「ハンス少年」の症例報告をしたと言われてますが、
フロイトじゃないんですよね。
ハンスの父親が「息子が私を憎んでいる」と訴えている。
父親が直接ハンスにエディプスを解釈している。
しかもウマ恐怖は消えない。
なのにフロイトが「それでいいんですよ」と言っている事例です。
最終的にハンス少年は、
母親が妹を出産したときの様子を思い出す。
難産で、血まみれになった母親がベッドで力無く横たわっていた。
そこに「母親の死」を感じ取った。
どうやら「通りで倒れた馬車馬」を見たときそれがフラッシュバックした。
その話をしてからウマ恐怖は消失していきます。
じゃあ、それがトラウマだったのか、ということですが、
フロイトはそうも信じていない。
というのは、その後その夫婦が離婚した後日譚を書き加えているからです。
恐怖を抱えていたのはハンスではなく父親の方だった。
そう見越していた印象なんです。
馬のハンスが飼い主の表情を読み取って「計算」をしていたように、
ハンス少年も父親の恐怖を照らし出す形で「症状」を表現していたのではないか。
転移を考えるフロイトにとって精神分析はすでにネットワーク論です。
脳内心理学ではない。
そういう含みもあって「ハンス」を符牒に使ったのかもしれません。
書くこともネットワーク
アクターネットワークを「書くこと」に応用すると
「書くこと」の意味が変わって見えてくるなあとも思いました。
言語化というと、
なにか曖昧模糊とした事態に「概念」を与える行為のような気がしますが、
よくよく考えると「概念」を創造しているわけではありません。
「概念」と「概念」との新しい関係を創造しているのです。
特別な場合だけじゃない。
普通になにかを書く場面でも「関係」を扱っている。
一文一文が「概念Aと概念Bを関係づける」という構造をしています。
「AはBである」だったり「AがBを生み出す」だったり。
関係を記述することが「文」となっている。
この場合、なにかの概念が先に存在するわけではない。
関係を記述することがメインであって、
実際に当てはめられる概念は何でもいい。
ここまで書いてきたところの「概念」を「考え」や「思想」
などに書き換えたとしても読者には意味が通る。
もし「サイト」と書いても、それはインターネットを比喩にして
「リンクが優先する」という立場を描こうとしてるのだなと伝わる。
その感じが「アクターネットワーク」なのだろうと思います。
積み木があれば家族に見立ててゴッコ遊びができる。
するとビオンのような
「ベータ要素があって、それがアルファ要素になり、プレ概念になり、
概念となる」という立場ではなく、
一気に「関係」だけ直観されるほうが「こころ」ではないか。
ノードである「概念」は後付けで埋まるだけで。
たとえばアイデアが浮かんだとき、
それを名詞で書き留めるのではなく「関係」として記述する。
「言語化 verbalize」の verb は「動詞」だから、
これの本質は「動詞化」だろうと思います。
乳幼児の言語習得は「名詞」が先行するため「動詞」が描けない。
でも描きたいのは「関係」なので
「名詞」の組み合わせで何とかしようとする。
その言語的欠陥が巡り巡って
「いくら書いても、書きたいことにたどり着かない」の不全感になる。
文章が長くなるのはそういうときですね。
というか、いまそうなってます。
まとめ
生成AIも「概念のネットワーク」で動いています。
ただ人のネットワークは「平均値」よりは「新奇性」に傾く。
聞き手にウケようとするから。
この「ウケ」は生成AIに組み込めるだろうか。