Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

ライフハックとは何か(準備編)

分けいっても分けいっても青い山。

実践理性批判

哲学史入門」の御子柴先生がわかりやすかったのでそのままカントに突入。 そして、さっそく挫折しました。

なるほど、カントの実践哲学は3階建てで、入口が「実践理性批判」。 ここで基礎固めしてから二階に上がると「道徳形而上学」。 それが済んでやっと三階の「人間学」にたどり着けるらしい。 「大きな山だなあ。よし、登るぞ」と思ったら、それはまだ序ノ口に過ぎず、奥にはもっと高い山脈がそびえてたわけですよ。 よくこんな体系を作り上げたものだなあ。 ひとりの人間の人生でできる規模とは思えない。

とはいえ、どうも「人間学」まで行くと、むしろ日常生活の話みたいです。 どうすれば人間社会が暮らしやすくなるか。 一言で言えば「ライフハック」ですね。 そこあたりならカントも身近な存在に感じられそうだけど、いかんせん、そこまでが遠い。

ということで、手持ちの装備を確認しておこうと思いました。

ライフハック

自分自身が「ライフハック」をどう考えているか。

人によっていろんな定義があるでしょうけど、あまり興味がわかないので省略します。 ライフハックの本って、まず売り込みたい「ハック」があって、そこにつながる定義を後出ししている印象がするからです。 純粋に「ハックってなんだろう?」と考えるときはノイズになる。 自分の感性を信じてみましょう。

「いいハックだなあ」と感じるのはどういう「ハック」か。

すると「生活上のひと工夫」を「ライフハック」と考えてますね。 個人的には。 この「工夫」とは何か。 そこを掘っていくことにします。

工夫

工夫とは、状況Aを状況Bに変える方法のことです。

状況Aは「現状」であり、たいてい「不便」を感じています。 その「不便」が解消した状態が状況Bになります。 「目標」とか「目的」とかですね。 そこにたどり着くことができたら「工夫」は「いいハック」と評価される。 たどり着けないと「今回は合わなかった」と判断。 また別の「工夫」を考えることになります。

「状況」は「環境」ではありません。 そこには「自分」が含まれています。

「自分」と「環境」が合わさってシステムを形成している。 ハイデガーが「人間」のことを「Dasein そこに存在すること」と呼んだのは、単独の「自分」もなければ単体としての「環境」もないからでしょう。 「自分」と「環境」がセットになって相互作用を起こしている。 それが「状況」です。

相互作用は双方向なので「自分」が「環境」に影響する部分と「環境」が「自分」に影響する部分とがあります。 こちらからいろいろと働きかけたり、向こうから来るものを受け止めたりする。 出力と入力がある。 これを「関与」と「観察」にしておきます。

「自分→環境」を「関与」、「環境→自分」を「観察」と呼ぶ。 こうすると人類学の「関与観察」になるので、フィールドワークの知見を流用しやすくなります。

「工夫」はこの相互作用に関わることです。 なので「関与の工夫」と「観察の工夫」に分類できます。 環境を変えていくか、自分を変えていくか。 これは独立変数ではなく、相互依存ですね。 関与すれば環境が変化し別の観察が発生するし、観察の方法を変えれば新たな認識が生まれ関与の仕方も変わる。 どちらが変わればもう一方も変化する。 そういう関係性があります。

フローチャート

ここまでの考察をmermaidに落としてみましょう。

graph
現状-->|工夫|目標
自分-->|関与|環境
環境-->|観察|自分

2つの水準の話をしてましたね。 これを2つの軸にすればいいのだろうか。

図にしてみると見事に「環境側」が抜けている。 はっはっは。 そうか、「環境」と呼んでいるけど人間世界を考える場合は「他者」のことか。 相手がいる。 テキストであれば「読者」がいる。 この相手の「観察」と「関与」もあります。 これを考慮しないと「工夫」は完成しない。 大事なところを見落としてました。

自分一人が踊っているのではない。 こちらからの「関与」を認知し解釈する「他者」がいる。 その「他者」までコントロールすることはできません。 説得したりゴリ押ししたりはできるけど。 まあ、下手な説得だと相手も納得しない。 ゴリ押しすれば、向こうの「関与」もゴリ押しで返してくる。 不毛なパワーゲームになります (それにしても「不毛」という言葉はハゲに厳しい。なんとかならんものか)。

この「他者」を考えることですね。 たぶんカントもそのことは考察しているでしょう。 もし書いてなければ机上の空論になってしまうから、そのときは「カント使えねぇ」と判断するだけのこと。

よし、この方針で「実践理性批判」を読んでみるぞ。

まとめ

mermaid、意外と下準備に使えるなあ。

追記

あとで考えたら人間社会での「目標」って「相互作用」ですね。 関係を修復したり、ほどよい距離を保ったりする。 その関係が「目標」。 エアコンが壊れたときの対応とは異なります。 「方法」が「目標」と一致している。 そうした特徴があります。

そしてその「ほどよい距離」が人によって異なる。 見誤ればパワハラになる。 そこあたりをカントが考えていると面白いのだけど。