Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

カードは戦略を構築するショートカットである

カードとリストの違いは戦略と戦術の違いかな。

戦略と戦術

クラウゼヴィッツが『戦争論』で戦争の方法をいくつかのレベルに分けていて、とくに「戦略と戦術」の区別を重視していました。 「戦略のミスは戦術ではカバーできない」みたいな話があったと思います。

戦略も戦術も目的を達成するための手段ですが、戦略はやや抽象的で、目的に至るための中間目標のようなもの。 戦術はその戦略を具体的な行動に落とし込んだもので、達成できたかどうか判定できるもの、です。 Todoリストで考えると、戦略がプロジェクトで、戦術がタスク。 プロジェクトを具体的なタスクの集まりとして記述することで、そのタスクを実行すればプロジェクトを遂行できたと見なすわけです。

少子化問題

たとえば少子化問題を考える場合。 出生率が減っている理由を「子育てにお金がかかるから」と考えれば、戦略は「経済的支援をする」になります。 子どもには何かとお金がかかる。 それを嫌って、若い人たちは子どもを産みたがらないのだろう。 お金の心配がなければ誰もが子どもを産みたいはずだ。 安心して子育てできるように経済的な負担を減らしてあげよう。 こう考えることが「戦略」です。

それに対し「子育てがワンオペの孤独な労働になっている」と考えれば、戦略も変わってきます。 女性がキャリアアップを諦め、正社員からパートや非常勤に仕事を変える。 家庭として収入が減るし、会社としては経験を積んできた優秀な社員を失う。 しかも核家族化した現代では地域から孤立し、閉塞感が生まれる。 もっと社会全体で子どもの成長を支えていけないか。 そう考えると、これも「戦略」になります。

どちらも抽象的ですし、正しいかどうかわかりません。 前者は「経済的な負担」を問題視し、後者は「精神的な負担」を軽減しようとします。 これを具体的な戦術に落とすとすれば、前者なら子育て家庭への給付金を考えるだろうし、学校教育の無償化も大事でしょう。 後者は産休は短くして職場復帰を早くし、社内に託児所を設けるとか育児相談を自由に受けられるとかの制度を作る。 戦術レベルは具体的で、数値化が可能です。 チェックリストに列挙することもできます。

PDCAはリストである

いわゆるPDCAは「戦略から戦術を作ること」です。 Pはプラン、つまり中間目標でありプロジェクト(あれ? 中間目標という言い方はあっても中間目的はないなあ。目標と目的は違うのか)。 Dはそれを具体的な行動にしたものです。 それはタスクだからCのチェックができる。 つまり、Pが戦略で、Dが戦術。

なので、PDCAからチェックリストを作ることができます。 チェックしながら、戦術を柔軟に変更できます。 ただし、戦略のチェックはできません。 PDCAは戦略が先にあり、それに適した戦術を選択するシステムです。 戦術レベルでの検討を反復する構造なので、戦略にミスがあるかどうかの判断は先送りしてしまう。

カードとは何か

では、戦略のほうをチェックするにはどうすればいいか。 つまり、どういう手続きを踏めば、様々な戦略を思いつき、戦略間の比較ができるようになるか。

目の前の問題を分析し、当面の目標を導き出すための方法。 これが「カード」だと思います。 カードには「問題」を書きます。 「問題」を分割して、扱えるサイズにします。 「直観」も書きます。 これらはチェックの付けようがない。 まだ戦略が存在する前の作業だから文脈もありません。 文脈に拘束されないので飛躍があります。 並べ換えるうちに見えてくるのが「文脈」であり、文脈が「戦略」の素となります。

ちょっと前に書いた「DESC記法」がそうですね。 箇条書きではあったけど、先行する文脈はありません。 どうもこれには「OODAループ」という名前があるようです。 観察し、分析し、方針を立て、行動に移す。 方針のところが「戦略」であり、行動のところが「戦術」です。 「観察」と「分析」を通して戦略が立案され、選択される。 この前半部分、「観察と分析」を視覚的に行うのが「カード」だろうと思います。

まとめ

こう考えてくると、リストはカードにもなるし、チェックリストにもなる。 アウトライナーがそうだものなあ。 それ自体は無色な、中間的存在かもしれない。