Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

iPadのキーボードを作るとはどういうことか

モノを作るときの手順について考えてみました。

憧れる

今回は無刻印キーボードですね。 HHKBの「墨」。 不要なものだけでなく、必要なものまで削ぎ落す。 キートップに文字がないとはどういうことでしょう。 これを「キーボード」と呼んでいいのだろうか。

でも美しい。 道具としての透明感が漂っています。 モノとしての佇まいが場に溶け込みながらも、調和を生み出している。 この機能美をiPadでも再現できないか。

その憧れがWax配列を作成する動機になっています。

体験分析

「目標が決まれば、あとは作るだけ」とはなりません。 そもそも自分が何に憧れ再現しようとしているか不明。 キートップを消すだけではないでしょう。 無刻印とは「手元を見ずにタイプできること」です。 それをソフトウェアキーボードで実現する。

「手元を見ない」とはどんな体験のことでしょうか。 これを考えないといけない。

  • キーの数が少ない
  • 覚えることが少ない
  • 指にフリックさせない

端的に言うと、長い文章を打っても疲れない配列にしたい。 「手元を見ない」だから指の稼働範囲は少なく抑える。 パソコンと違い、使う指は両手の中指だけです。 手首を固定してこの2本の届く範囲でタイプする。 書くことに集中できる。 それが理想形。

そこに近づけていきます。

ルールを明確化する

キーを減らすためにローマ字入力にしました。 使用頻度の低いキーは裏に隠す。 濁点に使う子音も表に出さない。 その原則でとりあえずWax配列ができました。

QWERTY配列をもとにしています。 日本語に「Q」は使わないから削る。 「WERTY」の並びを途中で曲げる。 「K」の周辺はほぼそのままに保つ。 これで学習コストを下げています。 新しく覚えることが少なく済む。 不思議と中段には「濁音にもなる子音」が集まりました。 ここあたりはロジカルですね。

母音は上段に位置する。 日本語を打つと「下から上へ」の動きがあるわけです。 なので「Y」も上段にほしい。 じゃあ、そうしちゃえ。 配列をコンパクトで「下から上へ」に指が動くように調える。 濁音は上フリックに割り当ててみました。

目標はゴールではない

「ツールは作ったら完成」にはなりません。 むしろ「やっとスタート地点」です。 実際に使ってみないと不都合は見つからない。 ここから「不便」の洗い出しが始まります。

当初の目的は「無刻印」ですから「着せ替え」でキートップを消してみます。 さて、本当にこれでタイプできるだろうか。 うんうん、悪くはない。 打てる、打てるぞ。

もちろん難点もあります。 こういうのはできなくて当然で、そこを分析するわけです。

一番大きいのは上フリックですね。 ツートンツーツートンと間延びする。 リズムが狂います。 タンタンタンと打っていきたい。 あと上段の左右フリックもタイプミスの原因になりやすい。 指の移動がフリックと判定されることがある。 これも避けたい。

いつも未完成

いま試しているのは「濁音キー」です。 「X」キーを廃止して「濁音キー」を置いてみました。 これで上フリックの問題は回避することができます。

ただ、次の問題が発生しました。 ここに「濁音キー」がくるとテンキーが使えなくなります。 「濁音キー」に下フリックを割り当てることができないので、数字の入力ができなくなります。 一難去ってまた一難。 数字の配列を変えてみるかなあ。

まとめ

「ツールを作る」とはこんな感じですね。 前に進みながら、その足を自分で引っ張る感じ。 解決しようとすると、それが新しい問題を引き起こす。

これを繰り返すことで当初の目標を軽く超えてしまう。 「手元を見ない」がもっと自然になることを考える。 見つかるまで七転八倒するけど、そこが一番楽しい。