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「その意味にどんな意味があるんだ?」と訊かれても困る。
ストア派
ストア派の「ストア」はギリシア語で「柱」という意味です。 なんでも「柱のところで話している人たち」ということらしいです。
ということは、それ以外のところにも人はいましたよね? 「柱派」がいるなら「跳び箱派」も「登り棒派」もいたはず。 彼らの唱えた哲学はどうなったのでしょう?
あと「ストア」が「アップル・ストア」の「ストア」と関連あるかも気になりました。 「お店」の意味の store。 これは「ストア派」と語源が同じなのでしょうか。
結論から言うと違うようです。 古期フランス語の estor(蓄える)から来ていて「物を備蓄するところ」が store の原義です。 原義なんですけど、インド・ヨーロッパ祖語まで遡ればきっと同じはず。 違うものも、古くは同じと強弁してみる。
インド・ヨーロッパ祖語のst-は「立つ」の意味から派生しています。 この系列のstand は「立つ」という意味で「お店」も意味する。 stay も「立つ」だし、statue も「立っているもの」です。 それは still(静止した)のように立ち止まっている。 物を蓄えておけば stock(在庫)になります。 たぶんストア派が資本主義経済を支える哲学にある。
このst系と対になるのは何かと考えてみると、たぶん flow ですね。 fly のように宙を飛び回り、flee のように逃げ去っていく。 それでいて influence のように他のものを動かす力になる。 不安定で、止まることを知らない。
この性格を名詞化すると floor なのかなと思いました。 もちろん floor は「床」であり、インド・ヨーロッパ祖語では pl系。 plain や plate 、あるいは plot の元となる「平らなもの」のこと。 でもpleu-が「流れる」なので、これはこれで同根かもしれない。 「遊び」を意味する play もどうだ。 専門家じゃないから適当なことを言いつつゴリ押しします。
フロア派
ということで「ストア派」に対し「フロア派」を立ててみる。 「柱」に対しては「床」を、「静止」に対しては「流動」を。 前に書いた「ストック」と「フロー」。 この二項対立で、テキストの「固まってきた部分」と「まだ動いている部分」が扱える。
もちろん「フロア」が随筆段階で、「ストア」が編集段階です。 フロアは flash(閃き)に突き動かされ、ストアでは understand(理解)が要求される。 動いては止まり、止まっては動く。 「床」だけではただの「外」です。 「柱」ばかりでは「内」に入ることもできません。 床と柱の組み合わせで「部屋」が生まれ、内と外を区切ります。
なのでストア派を考えるとき、影の存在の「フロア派」もいます。 しかし彼らは名を残さなかった。 流動的で掴みどころもなく、文字を書き残すよりも、声を愛し歌や演劇で主張を伝えた。 ちょうど恐竜たちが土砂に埋まり骨が化石となったように、歴史の中で「ストア派」の柱だけが残り「フロア派」が後世に伝えられることはなかった。
でも真実はいつも不易流行です。 変わらぬものと変わるものとがセットになっている。 変わらぬ history ばかりでは息苦しい。 flexibleなものが流れることで「空間」を作り出します。 人が生活するのは、柱と床で作られたこの「空間 room」においてです。
でも長い年月が経つと「床」があったことを人は忘れてしまう。 過去のものを復元するとき、柱だけでは実態はわからない。 恐竜の化石も、実際の姿は骨だけではない。
それは現代においても変わりません。 「変わらぬもの」と「変わるもの」のバランスに生活が成り立っています。 変わりすぎるとついて行くのが大変で、あまりに変わらないとチャンスも生まれてこない。 どこかを固定しつつ、別のところは可変にしておく。 そうしたバランスが必要です。
まとめ
flower(花)が「流れるもの」かと思ったけど、それは無理があるようでした。 栄枯盛衰の儚さがあるんだけど。 「フロア派」は「フラワー派」くらいまで読み替えたかった。 そうしたら、ちょっと能天気な感じになるし。