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要約ドリブンな作文技術

black and white typewriter on white table|600 Backlink | Photo by Markus Winkler on Unsplash

要約は文章より先に書く方がいい。

逆を考える

何か検討したいテーゼがあるとき、その逆を考えてみるといい。 それはあまのじゃくや逆張りではなく、テーゼを立体的に浮き上がらせる技法である。

例えば「要約は文章を書き終わってから書く」という常識がある。 「書き終わった文章を短くまとめること」が要約だから間違いないように思われる。 でも常識に囚われてしまうと、重要な何かを見落とすのではないだろうか。

そうしたとき逆の「要約を文章よりに先に書くこと」を検討することで問題を洗い出すごとができる。 常識だと思っていることはそう思っているだけで、揺るがない根拠があるわけではない。 というか、根拠があるかどうか検討したことがない。 ただ馴染みのある習慣に過ぎない場合が多い。

展開

要約は短い。 そして抽象的である。 だからそれを具体的な行動に落とし込んでいく。

逆を考えるときは肯定文を使う。 否定文は使わない。 否定文の「要約は文章のあとに書かない」だと何が焦点かわからない。 「要約は文章より先に書く」と肯定文にすれば、具体的な行動として表現できる。 具体的な行動は真偽を確かめやすい。

具体的にするとは、what→how→whyの順に記述することである。

まず定義し、具体的な方法を書き、その意味について考察する。 つまり、何を検討するか明示してから、それを試しに実践し、その効用の評価をする。 「具体的」とはそうしたプロセスで構成されている。

アサーティブ

このプロセスはアサーティブ・ライティングに似ている。 アサーティブとは自己表現する技術のこと。 「言いたいことが言えなかった」とならないようにするスキルである。 日常会話に使うことで生活のストレスを下げる効能がある。 それを作文に応用したのがアサーティブ・ライティングだ。

アサーティブはDESCの構造をしている。

  • D…客観的事実
  • E…主観的感想
  • S…対応策の提案
  • C…相手の意見を聞く

ポイントはSの「対応策の提案」である。 「こうなるといい」という「言いたいこと」を表現するとストレスが緩和する。 相手がそれに従ってくれるかどうかは二の次である。 それは他者の領域であり、自分に従わせようとすればパワハラだろう。 ここあたりはストア派的な「コントロールできるのは自分のことだけ」という割り切りがある。

「言いたいこと」は目標であり欲望である。 本人にもわからない。 まず状況を主観的に意味づけることを通して、やっと自分の欲望に気づくことができる。 なので、Eの「主観的感想」が「対応策の提案」より先にくる。 自分の気持ちに足を置くことで、未来に関わる「こうなるといい」が立ち上がる。 するとホッとして肩の力が抜ける。

ただ、いきなり主観的感想で始められると、聞かされる方は「なんのこと?」となってしまう。 そもそも文脈が見えない。 なので、聞き手も理解できる「客観的事実」から話を始める。 共通の基盤を作っておいてから主観的感想に入る。 これが手順だ。

アサーティブはそんな理詰めの対話スキルである。

要約ドリブン

how→whyの流れはDESCの「D→E」に当たる。 具体的な事実を書いてからその意味づけを考える。 それは書き手の主観が現れる部分であり、そこを通ることで次の「対応策の提案」ができる。 目標が明らかにならないと、すり合わせのしようがない。

要約はDESCの前段階になる。 それはwhatの部分だろう。 要約が文章全体を定義づけ、考察のhowやwhyを駆動していく。 エンジンを動かす最初のスイッチになる。

もし要約を初めに書かないとしたら、このプロセスは始動しない。 アイデアは生まれるが拡散しやすく、何が書きたいのか見えてこない。 書き慣れた人はそれでも筋を失わず展開する力があるだろう。 またその方が意外で面白い論が書きやすいかもしれない。

でもその力量がつくまでは要約が先の方がまとめやすい。 少なくともwhat→how→whyの三段階の展開はできる。 展開してみると、さらに書きたいことが出てくるかもしれない。 そのときは改めて、次の要約を書くことになるだろう。

まとめ

ここまで書いて気づいたが、DESCのCの段階「相手の意見を聞く」がいわゆる「読者目線」ではないだろうか。 「他者」の領域である。 「他者」の余地を作ることで、論が閉じたものにならない工夫が組み込まれている。

自分にとっても面白い文章を書くには、このCが決め手かもしれない。