Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

拷問とは欲望である

深い。 これは深いのか?

姫様"拷問"の時間です

だって、そうとしか言えないんだもん。 魔王城に囚われの姫様に毎晩襲いかかる苛烈な「拷問」の数々。 この「拷問」がどれも楽しそうなのが困ります。

今回は河原のキャンプ場で焼きマシュマロでしたね。 「拷問」に食べ物ネタは欠かせません。 美味しそうなものには抗えない。 食欲は人間の基本欲求だものなあ、と言うわけでもないようです。 別にグルメ料理が出てくるわけじゃない。 マシュマロです。 それで王国の秘密を語ってしまう姫様は愚かなのでしょうか。

そんなわけないですね。 やはり、巧妙に「拷問」が行われている。 たいていの食材に、姫様の心は動きません。 そこに「欲望」はないのです。 「欲望」は拷問官トーチャーによって形成されている。 つまり「欲望形成とは何か」がこのアニメの見どころです。 ここが深い。 「欲望」は「欲求」と違い、社会的な現象である。

パターンはいくつかあるのですが、話が進むに従って新しいパターンが加えられていく。 この原作者は天才じゃないだろうか。 どんなときに人は「欲望」を感じるのかを暴いていきます。 「なんでも話しますから」と嘆願してしまうのはどういう状況か。

他者の欲望

基本パターンは「他者の欲望」です。 まず拷問官が美味しそうに食べてみせる。 動物の肉球でぷにぷにする。 それまで興味を引かなかったものでも、他人が楽しんでいるのを見ると自分も味わってみたくなります。 卑劣なパターンですね。

しかも、知っている料理を知らない食べ方で食べる。 味の想像がつかない。 どんな味がするんだろう。 ああ、一口食べてみたい。 このアニメ、夜中に見てはいけません。 次の日、意味もなくたこ焼きを買ったりしてしまいます。

やはり、他者の快楽には心が誘われてしまう。

禁じられたもの

姫様は王国の王女にして第三騎士団騎士団長なので、子どもの頃から英才教育を受けてます。 これが敗因ですね。 いっぱい「してはいけないこと」を抱えている。 ほかの人なら子どもの頃にしていたような遊びの体験がない。 禁じられたものの彼岸には「快楽」があります。

まずテレビゲームをしたことがない。 友だちと遊園地に行ったことがない。 公園の砂場で砂遊びをしたことがない。 これらはどれも「拷問」になります。 幼少期のトラウマを刺激する恐ろしい「拷問」だ。

「欲望」がそれまでにあったわけではありません。 「ソレはダメです」と禁止されたとき「もしかしたらソレが私の欲しいものではないか」という錯覚が生まれる。 「廊下を走ってはダメです」と言われれば、隠れて走りたくなる。 人は天邪鬼な生き物です。 禁止が欲望を生み出す。 そこを攻めてくるなんて罪深い。

最大の欲望

そしてこのアニメの「最大の欲望」は魔王様です。

この魔王様、いったい何を考えているのでしょうか。 毎回トーチャーが苦労(?)しながら手に入れた「王国の秘密」を「水曜日は塾があるから」といった理由で却下します。 そりゃあ「王様はブリーフ派」といったしょーもない情報もありますが、たまには「城に通じる隠し通路」といった良質のネタもあるんだから部下たちを褒めてあげてください。 でないとヘソ曲げますよ。 仕事サボり出してもいいんですか。

部下たちもまず魔王様がどんな情報を欲しているか伺うべきでしょう。 そこが欠如している。 「魔王様の欲望は何か」が欠けたままなので、どの秘密も有効に利用されることはありません。 そして魔王様もそれを明かさない。 隠された「欲望」に対して、拷問官たちはあまり気にせずに自分の知りたいことを尋ねたりしています。

この「謎」がこのマンガのポイントですね。 魔王様は何を望んでいるのか。 そもそも人間と魔族の戦争は何を巡って行われているのか。 いや、本当に戦争なんかしてるのかなあ。 外での様子が出てこないのでわかりませんけど。

魔族と人がどんどん仲良くなっていく。 もしやこれが「魔王様の欲望」か。

まとめ

ということで、次が気になる。