Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

それはマインドマップではない

マインドマップを調べていて、2つのタイプが混在していることに気づきました。

コンセプトマップ

mermaidのmindmapで描かれるのは「コンセプトマップ」であって「マインドマップ」ではありません。 これは難しいなあ。

マインドマップはトニー・ブザンが考案した表現形で、ルールが明確に定まっています。 迷宮をイメージするといいかな。 迷宮にある部屋に名前がついているのが「コンセプトマップ」。 それに対し、通路に名前があるのが「マインドマップ」になります。

路線図で表現すると、駅名を中心にするのが「コンセプトマップ」。 「大阪線」や「京都線」のように路線の名前が「マインドマップ」に当たります。 注目している場所が異なる。 ノードを見るのか、リンクを見るのか。

mermaidの描画はノードのほう、駅名のところにキーワードを書くので「コンセプトマップ」なわけです。 これはブザンの考えた方法ではない。 正式には「マインドマップ」とは呼べません。

マインドマップ

じゃあ、マインドマップとは何でしょう。 ブザン自身は12のルールとか書いて登録商標になってるようだけど、そんなルールじゃなくて「根っこ」を知りたい。 それで勝手に連想してみました。

大きなポイントは「リンクに注目する」です。 そこがコンセプトマップと異なる点。 ノードにキーワードを書くと「行き詰まりの部屋」ができてしまう。 分岐先に終点ができるわけです。 まるでゴールがあるように見える。

でもリンクに名前をつけるのだと、通路が名を持つわけで、どこで終わっていても「途中」になります。 今はそこまでだけど、そこから新しい通路が伸びても構わない。 ちょうど「根」を描くのと同じです。 根の先からさらに根が地中へと伸びる可能性を残している。 これがマインドマップの構造です。

たしかにニューロンをモデルにしています。 分岐点のシナプスではなく、そのシナプスまで伸びる細胞が「神経」であり、その神経に注目して命名する。 点と点を繋ぐとき、その「繋がり」に重きを置く。 するとマインドマップの構造になります。

なので名前をつけるとしたら「関係」を名付ける感じになります。 名詞と名詞を線で結ぶのではなく、その「線」のほうを命名する。 だから「1ワード」が望ましいとされるし、文を書いたりはしない。

動詞化

「関係」を名付ける。 これは物事を「動詞」から見ることかな。

たとえば「田んぼに舞い降りる鶴」を描写するとき「田んぼ」と「鶴」といった名詞の側面からは見ない。 名詞から見てしまうと写真のように動きが止まります。

そうではない。 「飛んでいる」「羽ばたく」「滑空する」「着地」「羽を畳む」といった動詞の変移として風景を捉える。

今朝散歩しているとき、そんなふうに風景を見てみようと、動詞として捉える実験をしてみたのですが、新鮮ですね。 目前の光景が流動体になります。 変化し続ける生成流転の中に自分も溶け込んでいる。 そんな体感がしました。

言語化をverbalisationと言います。 このverbaliseはverbにすること、つまり「動詞」にすることを指します。 「言葉にする」だとこのニュアンスが逃げてしまいます。

なのでブザンもイメージを用いたり色付けしたりすることを推奨しているのでしょう。 たとえ「名詞」を書き込むとしても、その動詞的な側面から「関係」を捉えるようにする。 動きを喪失した「名詞化」だとマインドマップに命が吹き込めない。

イマーゴ

あと「イメージを使う」にしても「イメージ」のニュアンスが気になりました。 「イメージ」の語源はラテン語の imago です。 これは昆虫の「成虫」を意味します。

青虫を見ても、そこに「モンシロチョウ」の姿を先取りしてイメージする。 そうしたニュアンスが隠れています。 日本語ではわからないけど。 この imago としてのイメージ。

何か絵を描いたとしても、それを通してその変容する姿も先取りする。 それがないと、マインドマップを描きながらブランチの先に新しいブランチが伸びていく様を見て取れないのではないかと思いました。

反対に言うと、コンセプトマップのほうは静止画になりやすい。 分岐はするけれど行き詰まりになります。 次へ伸ばそうとすると、線を引いてから部屋を描くことになる。 項目が個々に閉じた形をしてしまう。 これが利点にもなるし、弱点にもなる。

利点とすると、コンセプトマップの方が「常識的」でしょうね。 わかりやすい。 関連するキーワードを繋いでいくだけだから。 知っている知識をツリー構造で体系化する。 きれいなカテゴリー分けができて情報整理がしやすい。

弱点とすると、これでは発想法になりません。 トニー・ブザンの描いたマインドマップを見ると、分岐したブランチから、別のブランチまでジャンプする矢印があちこちに付けてあります。 そう、ツリー構造ではなく、リゾームなんです。 彼の頭の中では、これが「マインド」なのだと思いました。

混線している。 その混線が新しい発想の糸口になっています。

まとめ

理論家じゃなく、芸術家の頭の中。 デジタルじゃ書き表せない。