ローマ字入力って呼ぶけど「本来のローマ字とは別物」って話を見つけて目から鱗が落ちました。 たしかに「ro-mazi」って長音を「ー」で表現するのはパソコンだからですね。 訓令式にしてもヘボン式にしても長音は母音の上に「^」をつけて表すか「roomaji」と母音を重ねるかです。 「ー」という発想はない。 キーボードで打つことになっていろいろ工夫が発明されてきた。 独自の歴史があるわけです。
ワープロの歴史
ワープロ専用機の年表を見つけました。
1977年にシャープが試作機を発表して「ワープロ」が始まります。 実用機は翌年東芝からJW-100が登場。 文字の並びは「たていすかんな」になっています。 今でもJISキーボードに刻印されているかな配列です。
1980年富士通が親指シフトを発表。 「うしてけ」ですね。 これがOASYSシリーズにつながるわけで、まだローマ字入力ではありません。 かな入力が必須と信じられていた。
1983年NECがM式を考案します。 これは左手側に母音、右手側に子音を配置した独自キーボードで、長音がなく母音側も二重母音があったりする。 これとセットでPC-8801用ワープロソフトPCWORDを発売します。 ここからローマ字入力にシフトし始める。
翌年沖電気からLettermate8、次の年にソニーからヒットビットワード、東芝からRupoシリーズが出てくる。 いずれもローマ字入力をサポートするようになりました。
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こう見てみるとM式キーボードが分岐点ですね。 NECは文豪シリーズより先にパソコン用ワープロを出していたのか。 パソコンにもワープロの波が寄せてきます。
FEPの歴史
パソコンの入力システム(FEP)も1983年から。 初めからローマ字入力のようです。
1983年アスキーがPC-100用にワープロソフトJS-WORDを発表します。 これに使われた漢字変換がジャストシステムのKTIS。 PC-9801にも移植され、ジャストシステムがアスキーと決別することで1985年に一太郎を発表。 漢字変換もATOKとなりました。
1986年バックスからVJE-β、管理工学研究所から松茸86が登場し、三強の時代へ。 「貴社の記者が汽車で帰社する」みたいな変換精度を競い、日本語入力が進化していきます。 変換がXFERキーからスペースに移り、入力ルールが確立されたのもこの頃でしょう。
ところが1989年に情勢を一変させる事態が起きた。 WXPの登場です。 エー・アイ・ソフトが自社製FEPをフリーソフトとして投入。 辞書を自作して公開できるので、またたく間にパソコン通信を通じて「その筋」に広がります。 デフォルトになる。
WXPはWXIIで有料化され、DOS/V版も登場し、WX-WinでWindows版も出て、これが今のMS-IMEの前身になっています。 たぶん、それまでは「la」が「ぁ」だったのを「xa」が「ぁ」になったのはWXPの影響じゃないかな。
そうそう、HP200LXという手のひらサイズのパソコンがあり、それの日本語化キットに入っていたのもWXIIでした。 当時は「モバイル」と言えばHP200LXのことでした。
ローマ字入力
各社が独自に決めていたパソコンのローマ字入力は一旦2000年にJISで規格化されます。 しかしスマホの普及とともに規格自体は2010年に破棄されました。 今は決まったルールのない状態ですね。 新しいデバイスには新しい入力システムを、でしょうか。
意外と見落としている入力を挙げてみます。
歴史的仮名遣い
「ゐ」や「ゑ」の出し方、知りませんでした。 「wyi」と「wye」ですね。 「ヵ」や「ヶ」の小さいのは「xka」や「xke」。 これは推測できます。H系
「sha」や「cha」はわかりますよ。 そうじゃなくて「tha」や「wha」。 何が出るか、わかります? 実は「てゃ」と「うぁ」。 これが選択肢にあると「バッティング」や「ウォッチ」を打つときに便利です。 「エディタ」もその応用で。W系
これも見落としていました。 「swa」とか「twa」ですが「hwa」が必需品です。 「f」の代用になります。 「ファイル」や「デフォルト」が「hw」でいけます。 でも「bw」を「v」の代わりにしてないのは不徹底だな。
まとめ
知らないことばかりで「ゑっ!」と驚きました。
追記
文化庁は「訓令式かヘボン式か」で何を調べようとしてるんだろう? 海外からの移民を増やそうということなら、海外から来た人に尋ねればいいし、「漢字表記を廃止してローマ字にしたい」という明治時代の夢を追っているなら時代錯誤だし。
公用語をローマ字にしたら、未来の人はこのブログも読めなくなるわけで(w。