試しに書いてみよう。
題材
元ネタがなければ文章は出てきません。一般人なんだから無から話は作れない。本を読んでその感想を書く。でも本の紹介でなければ、読書感想文でもありません。その本から問題意識をもらって、自分で考えてみる。その航跡をCardyで仕立ててみます。
仮要約を作る
まず要約を書きます。あ、本の要約じゃないです。自分の文章です。タイムマシンに乗って、気持ちだけ「未来」に行く。文章ができたものとして、そのサマリーをまとめます。「近代の問題点はアニミズムによって乗り越えられるのではないか」。そういう内容が出来上がるみたいですね。上から目線で偉そうです。
「未来」では論文は完成しています。だから安心して書き始めましょう。もちろん、これは仮要約。書き上がってベツモノができたら、それはそれで僥倖。「知らない自分」を発見することができます。
ツッコミを入れる
仮要約はツッコミどころ満載です。なぜそれが言えるのか。そもそも「近代の問題点」って何なんだ。「乗り越える」ってどこを目指してるのよ。この「作者」にいろいろ尋ねたい。それを書き加えます。読者力の見せどころ。
すると今度は答えたくなります。言い切りましょう。「近代では生命感覚がなくなった」。奥野先生の本では「ときめき」と呼んでいたもの。それが足りない。
答えを書いて疑問が出てきたら、それも書きます。文章の基本は質疑応答です。自分との対話を進めていく。行き詰まったら、身近な人にも質問を投げかけ対話してみましょう。内なる対話も外なる対話も「書くこと」の基盤にあるものです。
二項対立を探す
ここまでで、それなりのカードが集まります。20枚くらいになりました。これを分類してみます。関連ありそうなカードを集める。並べ替えてカードを近づけると、その「あいだ」を埋めるテーマが見えてきます。これも一つのカードにする。
そして絞り込みます。ポイントは二項対立。列挙しただけだと、二項対立が階層化していたり、複数存在していたりします。中心になっている2つの概念を探します。今回だと「近代 vs アニミズム」。シンプルに一つの二項対立に絞り込む。
対立ポイントを3つほど挙げます。比較するポイント。「生命感覚」「人間中心」「動き続ける」としてみました。この3つに、これまでのカードを振り分けます。ドラッグして下位項目にする。受け皿を「箱カード」とします。振り分けられないカードは「その他」の箱に入れておく。とりあえず、全部のカードを振り分けます。
スライドを作る
箱カードをズームします。そこに集まったキーワードや疑問点をもとに「スライド」を作ります。タイトルをつけて、その中に定義や推移など、ポイントを並べる。タイトルを「近代の問題点」としたら、その下位ブロックに「ときめきがない」「生命感覚の希薄さ」と具体例を並べる。そういうスライドを作ります。
スライドができたらアウトデントします。スライドが視界から消え、まだ使われていないカードが残ります。それらのカードでまたスライドを作る。これを繰り返す。
最終的に7枚ほどのスライドになりました。中身はありません。キーワードが入っているだけです。でも、話の流れは見て取れます。最初に具体的で身近な「まくら」が欲しいなあ、とか、アニミズムの学術的な定義を出したい、とか、他のスライドも必要そうです。どんどん書き入れていきましょう。
仕上げ
スライドに説明文を付けます。そのスライドを他の人に見てもらうとき、口頭でどう解説するか。それを考える。一つ一つのスライドに対し、説明文を作っていきます。
この説明文だけを取り出すと、それが「下書き」となります。そこだけでも「文章」として成り立つ。あとは美味しく肉付けていきましょう。
まとめ
もともと、紙のカードに図を書いておき、それを手許で見ながら発表するスタイルを取っていたので、パワーポイントが出てきたときは驚きでした。手札を晒している。手札は、自分が連想するための素材です。それを晒したら発表者のいる意味がない。
今もパワーポイントは下火になっていません。たぶん「発表すること」の敷居を下げてくれたツールだと思う。利点は活用していい。でも発表者が「スライドを進める・止める」の操作だけでは淋しいです。「肉声」の籠った発表が聞きたい。
それは「書くこと」でも変わりません。