Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

Cardyは発想法として使えるのだろうか

試しに書いてみよう。

題材

モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと
奥野克巳 (著) 形式: Kindle
息苦しいこの世界からの出口は、ある。片づけコンサルタント「こんまり」のメソッドは、自分とモノとの純粋な対話ではなく、自分自身との対話を目指すものなのではないか。アニミズムとは、地球や宇宙における存在者のうち、人間だけが必ずしも主人なのではないという考え方だとすれば、自分との対話を目指すのは、人間のことだけしか考えていないという意味で、真のアニミズムとは呼べないのではないか。本書の出発点は、ここにある。

元ネタがなければ文章は出てきません。一般人なんだから無から話は作れない。本を読んでその感想を書く。でも本の紹介でなければ、読書感想文でもありません。その本から問題意識をもらって、自分で考えてみる。その航跡をCardyで仕立ててみます。

仮要約を作る

まず要約を書きます。あ、本の要約じゃないです。自分の文章です。タイムマシンに乗って、気持ちだけ「未来」に行く。文章ができたものとして、そのサマリーをまとめます。「近代の問題点はアニミズムによって乗り越えられるのではないか」。そういう内容が出来上がるみたいですね。上から目線で偉そうです。

「未来」では論文は完成しています。だから安心して書き始めましょう。もちろん、これは仮要約。書き上がってベツモノができたら、それはそれで僥倖。「知らない自分」を発見することができます。

ツッコミを入れる

仮要約はツッコミどころ満載です。なぜそれが言えるのか。そもそも「近代の問題点」って何なんだ。「乗り越える」ってどこを目指してるのよ。この「作者」にいろいろ尋ねたい。それを書き加えます。読者力の見せどころ。

すると今度は答えたくなります。言い切りましょう。「近代では生命感覚がなくなった」。奥野先生の本では「ときめき」と呼んでいたもの。それが足りない。

答えを書いて疑問が出てきたら、それも書きます。文章の基本は質疑応答です。自分との対話を進めていく。行き詰まったら、身近な人にも質問を投げかけ対話してみましょう。内なる対話も外なる対話も「書くこと」の基盤にあるものです。

二項対立を探す

ここまでで、それなりのカードが集まります。20枚くらいになりました。これを分類してみます。関連ありそうなカードを集める。並べ替えてカードを近づけると、その「あいだ」を埋めるテーマが見えてきます。これも一つのカードにする。

そして絞り込みます。ポイントは二項対立。列挙しただけだと、二項対立が階層化していたり、複数存在していたりします。中心になっている2つの概念を探します。今回だと「近代 vs アニミズム」。シンプルに一つの二項対立に絞り込む。

対立ポイントを3つほど挙げます。比較するポイント。「生命感覚」「人間中心」「動き続ける」としてみました。この3つに、これまでのカードを振り分けます。ドラッグして下位項目にする。受け皿を「箱カード」とします。振り分けられないカードは「その他」の箱に入れておく。とりあえず、全部のカードを振り分けます。

スライドを作る

箱カードをズームします。そこに集まったキーワードや疑問点をもとに「スライド」を作ります。タイトルをつけて、その中に定義や推移など、ポイントを並べる。タイトルを「近代の問題点」としたら、その下位ブロックに「ときめきがない」「生命感覚の希薄さ」と具体例を並べる。そういうスライドを作ります。

スライドができたらアウトデントします。スライドが視界から消え、まだ使われていないカードが残ります。それらのカードでまたスライドを作る。これを繰り返す。

最終的に7枚ほどのスライドになりました。中身はありません。キーワードが入っているだけです。でも、話の流れは見て取れます。最初に具体的で身近な「まくら」が欲しいなあ、とか、アニミズムの学術的な定義を出したい、とか、他のスライドも必要そうです。どんどん書き入れていきましょう。

仕上げ

スライドに説明文を付けます。そのスライドを他の人に見てもらうとき、口頭でどう解説するか。それを考える。一つ一つのスライドに対し、説明文を作っていきます。

この説明文だけを取り出すと、それが「下書き」となります。そこだけでも「文章」として成り立つ。あとは美味しく肉付けていきましょう。

まとめ

もともと、紙のカードに図を書いておき、それを手許で見ながら発表するスタイルを取っていたので、パワーポイントが出てきたときは驚きでした。手札を晒している。手札は、自分が連想するための素材です。それを晒したら発表者のいる意味がない。

今もパワーポイントは下火になっていません。たぶん「発表すること」の敷居を下げてくれたツールだと思う。利点は活用していい。でも発表者が「スライドを進める・止める」の操作だけでは淋しいです。「肉声」の籠った発表が聞きたい。

それは「書くこと」でも変わりません。