Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

質問における未知数xを考えてみました

人工知能に尋ねるとき、何を尋ねるか意識することが必要です。 何がわかっていないかわからないと尋ねようがない。 それは数式と同じで、未知数xを問うことなのだと思う。 自分にとって今何が未知数になっているのだろう。

未知数x

未知数について考えてみました。 前にも書いたけれど、人の尋ねることはwhat、how、whyの三つじゃないかと思います。 説明って、たいてい、このどれかに分類されますよね。 定義か、方法か、理由か。 自分が尋ねたいのはどれに該当するか。

それを考えながら質問を組み立てないと、思った回答は得られません。

定義とは

定義とは「それは何か」です。 たとえば「犬とは何ですか」みたいな質問。

定義は他の概念との差異です。 「犬とは何ですか」の質問に「耳がある」や「尻尾がある」では答えになりません。 正しいけれど、他の動物と区別できないからです。 他の動物との違いを示さないと説明にならない。

なので、その概念だけ知っても役に立ちません。 類似の概念も調べ、それとの違いから浮き上がらせる。 そういう手続きで質問を深めることになります。 人工知能に尋ねるときも、近接する別概念との差異を尋ねると、元の概念が明確になります。 「柴犬と土佐犬の違いは何ですか」みたいに。 意外と知らない事実が出てきて楽しい。

方法とは

方法とは「ポチの毛が抜けてきました。どうすればいいですか」という質問。 何かの病気かな。 どうしたらいいんだろう。 病気の状態を脱し、健康となるには何を行えばいいのか。 それが方法の質問です。 日頃よく使うのはこれじゃないかな。

方法を知るには現状と目標の両方が明確じゃないと困ります。 現状は簡単ですよ、質問の通り。 ポチの毛が抜けています。 可哀想です。 けれど、目標は難しい。 「この病気がなくなった状態」とは限りませんよね。 「病気がありながらも生活に支障がない状態」かもしれない。 「再発しないように環境を変えること」かもしれない。 単に「季節の変わり目によくあること」かもしれない。 目標によって方法は変わる。

そこには尋ねる人の価値観が関与しています。 「なぜその目標を選ぶのか」という理由の質問が隠れている。 方法に答えるには理由も見えていないといけない。 これは人によって異なることだから一概には決められません。 人工知能に尋ねるときも、自分にとって納得がいく目標を提示しないと、思った回答は返ってきません。

理由とは

理由とは「なぜですか」と問いかけること。 「なぜポチを飼うことになったのですか」。 そこには原因と意味が絡みあっているんですよね。 この区別も難しい。

原因とは腑に落ちることです。 「なるほど」と思うことであり、自分の価値観に合致している。 モフモフしたかった。 強盗事件が多発していて、番犬が欲しかった。 目と目が合って「巡り合せ」を感じた。 そこには個人の解釈スタイルが介在しています。 客観的な因果関係などない。 原因の質問は自分の価値体系に閉じています。

そうした質問は人工知能にしないでしょう。 自分しか知らないことだから。 けれど、次のような質問はありえます。 「毛が抜けるのにはどんな理由が考えられますか」。 この質問もまた原因の質問です。 なので、そこにも価値観が介在しています。 「ウィルスによるもの」と言われて納得する人もいるし、 「遺伝的な体質によるもの」で納得する人もいる。 「裏山の祠の祟り」で「ああ、そうかー」と思うかもしれない。

これは人工知能の回答を見ないと判断できません。 それが正しいかどうかではなく、読んで腑に落ちるかどうかだからです。 答えを見るまで、人は自分の価値観に気づけない。 答えを見て「変だな」と思えば、その違和感を自分の中に探求する。 そういう意味では、回答に違和感があるときの方が、自己発見に繋がるので面白いです。

意味の質問

反対に、意味としての質問はこれに該当しません。 「なぜ、他でもない、このポチだったのか」。 そういうタイプの質問だからです。 それは一緒に暮らすうちに積み上げていくもの。 あるいは、永遠の別れがやってきたとき気付かされるもの。 いつの間にか、自分のなかで価値観が変わっている。 そういう出来事が意味だからです。

事前には予測できません。 原因レベルの「モフモフしたかったから」とは別のことです。 偶然がいっぱい入ってきます。 それが意味を豊かにする。 人工知能がこの水準の質問に答えることはできないでしょう。

こう考えると、原因と意味の違いが明らかになります。 原因は自分の価値体系を維持するのに対し、意味では価値体系自体が変化します。 原因は問題を迷路として捉えていて、そこからの脱出が課題となる。 意味は問題を迷宮と見なして、そこを散策することに価値を置く。 原因は解決する方法を導くが、意味は問題そのものを解消します。 意味において問題は、取り省くものではなく、通り抜けるものだからです。

まとめ

flowchart LR
what === how
how === why
why === what
others <--> what
why --> meaning
how --> goal
why --> cause
goal --- cause
goal --- others
others --- cause

ということで、人工知能に尋ねるのは原因まで。 意味まで教えてもらうのは野暮というもの。 そこは自分で見つけないと味気ない。