Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

詫び石の原理

building photography photo – Free Image on Unsplash

銀行のATM障害や携帯電話の通信障害のあと「こちらは不利益を被ったのだから、何らかの補償があるべきだ」という議論が出てくるけど、よく考えると難しい。

確かに、原爆の黒い雨訴訟やハンセン氏病の差別への補償と似ている状況ではある。ただ「不愉快な思いをしたから見返りがあるべきだ」だと、ユスリやタカリと変わらない。「気ぃ悪くしたやんけ。どう落とし前つけてくれんねん」。「不愉快」というカードを切れば、自分が有利な立場にあるという前提がある。

考えてみると、ソシャゲでサーバー落ちしたときに「詫び石」を要求するのと同じ心性なんだよなあ。ゲームを有利に進めるための魔法石を、通常は有料で購入するところを無料で配るように要求する。ゲーム会社としては、そのゲームで使ってもらうものだから、そんなに損失はない。だから、気軽に配布される。

そうこうしているうちに「不愉快」がコストの支払いに流用されるようになる。そこが不思議だ。積極的に「不愉快」を演じて、相手より有利な立場に立とうとする。そういう使い方だと「強請」だろう。記者会見が開かれ「世間をお騒がせして申し訳なかった」と頭を下げる。マスコミがパシャパシャとシャッターを切る。被害者に対してではなく「世間の持った不快感」への謝罪である。なんだか変だ。

この間、Dynalistがサーバーダウンしていた。Dynalistだけではなく、広い範囲のサーバーダウンだったらしい。あれこれ、オンライン・サービスが使えない状態になっていた。そういうとき「詫び石を出せ」という論調は出てこない。ひたすら復旧を待って、回復したときユーザーは安堵し、エンジニアの人たちに感謝した。

これって、何が違うのだろうか。