Jazzと読書の日々

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ダンジョン飯 黄金郷について

急展開でしたね。

ダンジョン飯

カブルーが地上に戻ると西方エルフがやってきてダンジョンを閉鎖すると言う。 そのころライオスたちは亡霊に連れられ黄金郷にたどり着きます。 物語が核心へと動き出す。

今回は見どころの多いエピソードでした。

鏡の関係

アニメを見ながら「鏡の関係」が置かれていることに気づきました。

なぜ急に黄金郷に行くことになったのか。 それはマルシルの「夢」に関わることだからです。 あの「夢魔」の回の。 悪夢の中でマルシルが自分の「欲望」と向き合う。 あれが重要な転機でした。 「可愛い犬と旅する楽しい話だった」でオチをつけたものの、それで納得行くわけがありません。

ナイトメアの正体が「ハマグリ」なのは司馬遷史記』に準拠するそうです。 ナイトメアを調理すると蜃気楼が立ち込めたじゃないですか。 「蜃」というのは大蛤のことで、azooKeyでも「おおはまぐり」と打つと「蜃」が出てきます。 これは龍の一種とされ、実は干支の「辰」のことです。 この辰が吐く気によって、存在しないものが現れる現象を司馬遷が「蜃気楼」と呼んだんだそうです。

マルシルは悪夢の中で、自分がハーフエルフであることに苦しんでいます。 愛する父親もペットも友人も、自分より先に世を去ってしまう。 寿命の長さが異なるため、他の人たちと時間感覚が違う。 自分は一人取り残される。 その寂しさと恐怖が悪夢の中で魔物の姿をしていました。

だから古代魔法を研究している。 地下迷宮に潜るパーティにも入った。 そこには健気な彼女の「欲望」があります。 そして「あの魔導書があれば」と、狂乱の魔術師シスルが持つ本が「対象a」へと変容します。 「あれさえあれば私の不安は解消される」。

でも、その「欲望」はどういう結末を呼ぶでしょうか。 ライオスも夢の中でその「欲望」を応援しました。 まだ意味がわかってないからです。 原作の久井先生も連載中に気づいたのじゃないでしょうか。 マルシルとシスルは「鏡の関係」にある、と。 二人とも「愛する人たちと一緒にいたい」と願っている。 いつまでも永遠に。

でもそれには「無理」がある。 今回、黄金郷の当主ヤアドが登場したことで「いつまでも永遠に」がどういうことか語られます。 狂乱の魔術師は、このままマルシルが突き進む先にある「未来のマルシル」です。 黄金郷で彼女は「自分の理想」の成れの果てと直面する。 これでいいのだろうか。 その世界で人々は幸せなのだろうか。

黄金郷は「蜃気楼」です。 存在しないはずのものがいつまでも存在している。 そこに「リアル」はありません。 センシの「あの食事には味がなかった」はさすがですね。 「リアル」は「味」です。 死すべき存在だけが「生きる」を味わうことができる。

さてこの問題を、マルシルはどう乗り越えていくのでしょうか。

まとめ

イヅツミが黄金郷で「動物」として振る舞うのは、不老不死に囚われるのが「人間」だけということを表しているのだろうか。