Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

Evernoteの終焉と実存主義

baby elephant|600 Backlink | Photo by Karly Nelson on Unsplash

ラカンが「人生とは、夜中に強盗がやってきて『金か命か』と選択を迫られるよなものだ」と言っていたけど、これっていろいろ応用が効く。

Evernote

Evernoteのサービス内容が変わり、無料のまま使い続けるのが難しくなりました。

Evernote社から見れば「存続のためにはお金がかかるけど、お金を取ろうとすると存続できない」という葛藤状態ですね。 お金を選ぶと命が危ない。 なのにお金を選んでしまってユーザがどんどん離れて行きます。

無料で基本サービスを提供しても、上位のサービスをプレミアム化すれば収入を確保できる。 そうした商業モデルは「フリーミアム」と呼ばれてきました。 これが破綻してきているのかもしれない。 どこに問題があったのでしょう。

たぶんプレミアム化は関係なかったのです。 フリーで成功しているサービスはGoogleYouTubeが考えられます。 それとEvernoteはどこが異なるのか。 ノートに広告を入れれば良かったのだろうか。 どうも、そういうことではなさそうです。

コンテンツ

異なるのはコンテンツじゃないかと思いました。

GoogleYouTubeはプラットフォームであって、コンテンツを作っているわけではありません。 コンテンツはユーザが無料で作ってくれる。 これはほかのメディアではありえませんね。 テレビ番組はテレビ局が作るし、雑誌の紙面は出版社が原稿を書きます。 提供者と消費者が分離している。

ネット上では消費者が提供者になります。 ヤフオクやメルカリのように交換の形態を取る。 ユーザの参加が前提です。 有料コンテンツを認めることで手数料を徴収できる。 有料を認めると専門の業者も入ってくる。 そこで収益が上がります。

コンテンツをユーザに任せ、売買を認める。 プラットフォームの継続する仕組みはそんなところでしょう。

ノートサービス

ノートアプリに同じモデルを適用できるかどうか。 単にサブスクだけでは微々たるものでしょう。 基本的なところは無料にしないといけないから、扱えるノートの数やデバイス間の同期で差別化する。 そうしたサブスクはユーザが離れる要因にもなります。

とすればコンテンツの公開を無料にすること。 ノートアプリとブログをセットにしたサービスが思いつきます。 noteのように一部の記事を有料化できるタイプか、hatenaのように広告付きにするか。 あるいは全文公開するけど「投げ銭」ができるとか。 ユーザにコンテンツを作ってもらう。 Publish自体を有料化したObsidianは愚策だと思いますね。

もうひとつ思いつくのはWikipediaのスタイル。 コンテンツの作成や修正をユーザに開放し、それとは別に寄付を募る。 アプリだと今Thunderbirdがやっていることです。 無広告のアプリだけど定期的に寄付を募る。 それもありかと思います。

金か命か

「金か命か」は主人と奴隷の関係のことです。 金を取れば「主人」にはなれるけど、生死は「奴隷」に握られる。 命を取れば「奴隷」になって自分の好きなことはできない。 ヘーゲルの指摘通り、そういうパワーゲームを近代人はしている。

「経済か福祉か」と読み替えれば民主主義政治の話だし、それはそのまま「自由か平等か」の二項対立を問うています。 理想的には二つの政党があって、その時々で重要な方を国民が選べるといいかな。 自民党自由党民主党に分割すればいいけどね、昔みたいに。 一党支配になればバランスを失い、社会主義国と変わりません。

あるいは「実存か生存か」でもいい。 「金」と呼ぶと即物的ですけど「命を捨ててでも守りたい何か」と読めば実存主義の話です。 「命を捨てる」が大げさなら「一生を賭けて追求したいこと」でも構わない。 それが「実存」であり、今の若い人にもあると思うんですけどね。 持続可能な「私」としての道筋を作ること。

何か違うとしたら「老後」かなあ。 昔は自分に「老後」があるとは思ってなかったけど、ネット上を見ると若い人が「老後」の話をしている。 年金制度がどうなるかとか、孤独死をどうするかとか。 「アリとキリギリス」のアリであろうとしている。 アリとして生き延びても、冬には定年が延長され、さらに増税されるだけなのに。

昔は老人が少なかったから「自分も老人になるまでに死ぬもの」と思ってました。 それは戦後の特殊な時期だけかもしれない。 でも中学校の同級生は半分近く死んでるからなあ。 「死」は身近で、誰にでも「老後」があるわけじゃないですよ。 じゃあ「何に一生を賭けるか」となりそうだけど。 なんでそうならないんだろう?

まとめ

Evernoteは短い命かもしれない。 でも最初から存続を目指していたら流行りもしなかったでしょう。 デジタルノートのあるべき姿を示してくれた。 それが「実存」だと思う。

安らかに眠れ、Evernote

追記

「Publishは愚策」はちょっと言い過ぎました。 でもRSSが取れないんですね? するとブログではないということか。 Wikiとして構築する感じ?