Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

「無色透明な歴史など存在しない」

このサイトが面白い。

esse-sense

どう面白いか説明できない。

東大経済学部の山本先生へのインタビューなんですが、めちゃくちゃ刺激的でとてもいいんだけど、まとめようとしても、うまくまとまらないんです。

これはいいなあ。 複雑な話をわかりやすく、でも手を抜かずに言葉にすると、最終的に「簡単には要約できない」ってなるんですが、それですね。

はい、要約できません。

エビデンスの欲望

エビデンスは大事だけれど、エビデンスの、そのとき書かれた欲望まで考慮しながら資料に当たる。 これがすごいなあ。 史料を書き残すところに「人」がいる。 その「人」への配慮というか、共感というか、追体験というか、そこから歴史を構成していく。

とくに、言葉を残せなかった人たちへのアプローチがすごい。 ピューリタン革命以前の女性たちは、文章を書き残したり、公的な場でスピーチしたりしていない。 したくてもできなかったし、そもそも発言したいという欲望もなかった。 その女性たちがどういう意見を持っていたかを、国産石鹸に対する不買運動の記録から読み解いています。

ハイ=ストーリー

これが history だなあ。 hi-story。 ハイレベルの物語です。

正史は男性からの目で書かれた史料の集まりに過ぎないけれど、切り口を変えると「モノ言わない人たち」の声を拾い上げることができる。 多重の物語が絡まり合っている。

女性たちの言葉は間接話法でしか出てこないけれど、それでも丹念に拾い上げると「一つの声」になっていく。 聞き取れるものになるのです。 これが「精神分析」だろうなあ。

植民地から安価な石鹸が入ることでイギリス国内の石鹸が売れなくなった。 石鹸会社の利権が絡む貴族たちが法律をねじ曲げ、輸入した石鹸の販売を禁じる。 表向きは「国内産業を守ろう」とか、今でも聞く理屈です。 価格は上がり、質は劣化する。 ところが国産石鹸が売れない。 生活に必要な日用品なのに売り上げが伸びていかない。

家庭で石鹸を使って洗濯しているのは女性たちです。 なので、この不買運動の陰に女性の「意見」が見える。 貴族の洋服を洗う工場で働いていたのも女性たちです。 貴族たちもダメージを受ける。 それが国王から権力を奪い取る革命に繋がるのだから面白い。

従来の歴史学では「抑圧」されていた物語が浮かび上がってくる。

まとめ

いや、こういうまとめでは、元の話とは違うものになっちゃうなあ。 そうじゃないんですよ。 やっぱり、ほんまモノの話は面白いんですよ。