Jazzと読書の日々

iPadを筆記具として使う方法を模索します

『今日のアニミズム』を読んでいたら

おや、こんなところに。

今日のアニミズム

今日のアニミズム
奥野 克巳 他1名
内容紹介人類学者・岩田慶治の仕事、テトラレンマをはじめとする仏教の思想と論理、そして現代において注目を集めるモノと人のネットワークを含む新たな存在論の議論から、「アニミズム」の今日性を問う文化人類学と哲学の対話。目 次まえがき(清水高志)第一章 アニミズム、無限の往還、崩れる壁(奥野克巳)第二章 トライコトミー Trichotomy(三分法)、禅、アニミズム(清水高志)第三章 対談 I (奥野克巳×清水高志)第四章 他力論的アニミズム(奥野克巳)第五章 アニミズム原論ーー《相依性》と情念の哲学(清水高志)第六章 対談 II (奥野克巳×清水高志)あとがき(奥野克巳)著者について立教大学異文化コミュニケーション学部教授。北・中米から東南・南・西・北アジアメラネシア、ヨーロッパを旅し、東南アジア・ボルネオ島焼畑稲作民カリスと狩猟民プナンのフィールドワークを実施。主な著書・共編著に『モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと』(亜紀書房、2020年)、『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房、2018年)、『モア・ザン・ヒューマン マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』(以文社、共編著、2018年)、主な訳書にティム・インゴルド『人類学とは何か』(共訳、亜紀書房、2020年)などがある。東洋大学教授。井上円了哲学センター理事。専門は哲学、情報創造論。主な著書に『実在への殺到』(水声社、2017年)、『ミシェル・セール 普遍学からアクター・ネットワークまで』(白水社、2013年)、『セール、創造のモナド ライプニッツから西田まで』(冬弓舎、2004年)、主な訳書にミシェル・セール『作家、学者、哲学者は世界を旅する』(水声社、2016年)、G.W.ライプニッツライプニッツ著作集第II期 哲学書簡 知の綺羅星たちとの交歓』(共訳、工作舎 、2015年)などがある。

文化人類学者の奥野克巳とライプニッツ哲学者清水高志の対談集。内容も面白かったけれど、上野学さんの『オブジェクト指向UIデザイン』が出てきたのがビックリだった。Textwellを作った上野さんね。モードレスはアニミズムだったんだ。

アニミズムとは「全ては魂の表れである」という生命観。命がいま仮に熊の姿をしたり鳥の姿をしたりしている。この「私」も同じで、いま仮に「私」であるだけである。そこに彼我の区別はない。この体験を「カミ」と呼ぶ立場。

それはどの文化の根底にはあるけれど、西洋では「人間」を特別視して「自然」をただの精密機械のように扱い、改造し搾取し「科学」を発展させてきた。でもそのことが昨今の気候変動のように、生態学的な危機を招いているのではないか。新しいエコロジーを模索するために、いま一度アニミズムを再評価すべきであろう。

たぶん、そんな話が書いてあります。実際の対談はもちょっと複雑です。

体験と認知

体験と認知の関係かな。そこから入ると捉えやすいかも知れない。体験は下図のような構造をしています。

graph LR
a --- b
b --- c
c === d
d --- e
d --- a
b --- d
a === e
c --- e

ところが認知は下図のようになります。

graph LR
a --> b
b --> c
c --> d
d --> e

全然違いますよね。体験と認知の間にズレがある。体験を捉えるには認知が必要ですが、認知に騙されると体験を見誤る。「身体でわかる」と「頭でわかる」の関係は微妙です。アニミズムは「身体でわかる」をとことん突き詰める。

このズレは言語が介在するからですが、そのために生じる二項対立に「主体/対象」「普遍/個別」「内/外」の三つがある。これらを相対化しながら「頭でわかろう」としてきたのが西洋哲学であり、別方向から「身体でわかろう」とアプローチしたのが東洋思想である。と、そんな感じでしょうか。

むろん、そのままだと「西洋/東洋」という二項対立に陥るので、対談の中では何度も回避していますが、どうも「岩田慶治、すげー」になっているのは否めません。やっぱり、すげーです。体験そのものを記述しようとしている。体験にどっぷり浸かっているわけではなく、自分の認知に騙されるわけでもない。

岩田慶治

カミの人類学 不思議の場所をめぐって (講談社文庫)
岩田慶治
われわれは、カミという言葉を忘れようとしている。しかし、未開とよばれる人びとは、夢に実体を見て、日々草木虫魚と語らいつつ、カミとともに生きている。近代文明が切り捨ててしまった不思議の世界にメスを入れ、移りゆく森羅万象の闇の底に、初源の生の姿をとらえる。野性の眼・耳・心をとり戻す、衝撃的な原点の書。自然界に拡がる、人類が創り出す「カミの空間」を探り、失われた心を求める意欲作!

体験は迷宮です。その迷宮に自ら入り込むのが文化人類学です。参与観察です。それがどういうことかを人類学者の岩田慶治は言葉にしてきた。それを「アニミズム」と呼んでいるようです。体験の中に飛び込み、それを生きながら、把握していく。

オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理 WEB+DB PRESS plus
ソシオメディア株式会社 他2名
内容紹介こちらの書籍は 2021/08/04 紙版の5刷に対応するため更新をおこないました。(概要)オブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)とは、オブジェクト(もの、名詞)を起点としてUIを設計すること。タスク(やること、動詞)を起点としたUIに比べて、画面数が減って作業効率が高まり、また開発効率や拡張性も向上する、いわば「銀の弾丸」的な効果を持つ。ブログや雑誌記事などで大きな反響を得たこの設計手法について、前半部では理論やプロセスを詳説。そして後半部の「ワークアウト(実践演習)」では18の課題に読者がチャレンジ。実際に考え、手を動かし、試行錯誤をすることにより、OOUIの設計手法を体得できる。(こんな方におすすめ)・Web/モバイルアプリケーション開発者・ユーザーインターフェースデザイナー・フロントエンドエンジニア(目次)1 オブジェクト指向UIとは何か  1-1 目当ての現し  1-2 お金が先か、商品が先か  1-3 オブジェクト指向UI  1-4 オブジェクト指向か? タスク指向か?  1-5 UIがタスク指向になってしまう背景2 オブジェクト指向UIの設計プロセス  2-1 デザインプロセスのミッシングリンクをつなぐ  2-2 アプリケーションの手掛かり  2-3 ユーザー、タスク、オブジェクトの関係  2-4 ソフトウェアデザインのレイヤー  2-5 デザインの究極の目的は形である  2-6 オブジェクト指向UI設計の基本ステップ3 オブジェクト指向UI設計の実践  3-1 オブジェクト指向UIの設計ステップ  3-2 本章でデザインするものの全体像  3-3 ステップ1. オブジェクトの抽出  3-4 ステップ2. ビューとナビゲーションの検討  3-5 ステップ3. レイアウトパターンの適用  3-6 タスクをどう扱うか4 ワークアウト:基礎編  進め方  レベル1 メモアプリケーション  レベル2 社員名簿アプリケーション  レベル3 イベント店舗管理アプリケーション  レベル4 会議室予約アプリケーション  レベル5 家族で遊べる場所を探すアプリケーション  レベル6 商品管理アプリケーション  レベル7 商品管理アプリケーション  レベル8 商品管理アプリケーション  レベル9 商品管理アプリケーション5 ワークアウト:応用編  進め方  レベル10 スマートフォン用の営業支援アプリケーション  レベル11 イベント管理アプリケーション  レベル12 保険契約の顧客管理アプリケーション  レベル13 アセット管理アプリケーション  レベル14 サイト管理アプリケーション  レベル15 出張申請・精算アプリケーション  レベル16 契約管理アプリケーション  レベル17 通貨換算アプリケーション  レベル18 販売実績照会アプリケーション6 オブジェクト指向UIのフィロソフィー  6-1 オブジェクトの原義  6-2 オブジェクト指向  6-3 GUI  6-4 モードレス  6-5 オブジェクト指向UIについての文献出版社からのコメントオブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)とは、オブジェクトを起点としてUIを設計すること。タスクを起点としたUIに比べて、操作性と開発効率が劇的に向上します。その理論とプロセス、実践法を詳説し、さらに手を動かして身につける18の実践演習も用意しました。内容(「BOOK」データベースより)銀の弾丸、OOUI。タスクからオブジェクトへの転回による、操作性と開発効率の劇的な向上。手を動かして身につける18の実践演習付き。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)藤井/幸多ソシオメディア株式会社ユーザーインターフェースデザイナー。各種ビジネスアプリケーションをはじめさまざまなアプリケーションのデザインコンサルティングを経験。UI設計、ユーザビリティテスト、デザインガイドライン策定、デザイン評価、OOUIのメソッドとトレーニングプログラムの開発/実施などを通して、デザイン組織への支援を行う上野/学デザインコンサルタント/デザイナー。各種ビジネスアプリケーション、ウェブ/モバイル/デスクトップアプリケーション、その他のさまざまなインタラクティブメディアのヒューマンインターフェース設計およびユーザビリティ評価に従事。ソシオメディアにおいてデザインメソッド開発を担う。執筆、講演など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)著者について■著者略歴 ソシオメディア株式会社 デジタルプロダクトに特化したデザインコンサルティング会社。2001年の創業以来、インタラクションデザイン、ユーザビリティエンジニアリング、デザインマネジメントなどの分野で先端的な実績を積み重ねるとともに、書籍、雑誌記事、セミナー、イベントなどで活発な情報発信を行い、業界をリードし続けている。近年はOOUIのトレーニングサービスが好評。 藤井 幸多 ソシオメディア株式会社ユーザーインターフェースデザイナー。各種ビジネスアプリケーションをはじめさまざまなアプリケーションのデザインコンサルティングを経験。UI設計、ユーザビリティテスト、デザインガイドライン策定、デザイン評価、OOUI メソッドとトレーニングプログラムの開発/実施などを通して、デザイン組織への支援を行う。 Twitter:@ atochotto ■監修者略歴 上野 学 デザインコンサルタント/デザイナー。各種ビジネスアプリケーション、ウェブ/モバイル/デスクトップアプリケーション、その他の様々なインタラクティブメディアのヒューマンインターフェース設計およびユーザビリティ評価に従事。ソシオメディアにおいてデザインメソッド開発を担う。執筆、講演など多数。 Twitter:@manabuueno

同じことは、システムのUIを考えるときにも起こります。ユーザの体験を考えるために自らもユーザになる。そこからデザインを構築していく。それもまた参与観察についての科学です。アニミズムにならざるを得ない。

清水さん、「オブジェクト指向」をグレアム・ハーマンの思弁的実在論だと勘違いしたんじゃないかと思いますが、でもぴったり来たらしい。面白い。

Textwellでcsvを読み込んだり表を作成したり - Jazzと読書の日々