おもにニコニコ動画しか見てないけど。
CloverWorks
2022年はCloverWorksの当たり年だった。コスプレの世界をラブコメで表現する『その着せ替え人形は恋をする』と、前思春期的なチャム期の儚い心理描写が光る『明日ちゃんのセーラー服』。この二つが冬アニメを牽引したと言ってもいい。
春になると『SPYxFAMILY』が始まる。これは「令和のサザエさん」と呼べる国民アニメである。いつ戦争が始まってもおかしくない危機的な状況なのに、全然話が進まない。もしやアーニャはずっと小学一年生だろうか。やはりサザエさん時空なのか。
夏の『シャドーハウス』は、ごめん、観てませんでした。『異世界おじさん』と『オバロ』を見てた。あと『リコリス・リコイル』が流行った印象しかない。「孤児を集めて殺人集団に育て上げ日本の秩序が保たれている」という異様な世界なのに、そのまま肯定されて終わったのが「現代」だと思う。どこかでバランス取らなきゃ。
そして秋アニメの『ぼっち・ざ・ろっく』。4コマ漫画をしっかりストーリーアニメに仕上げている。主人公に対する陰キャ描写がくどいが、音楽シーンの丁寧さで昇華される。弾き始めの緊張と高揚。そのシーンまでの緩急の付けかた。終わったあとの安堵と達成感。視聴者を引き込んで追体験させてくれる。
今年のCloverWorksはこの「追体験の作り方」が抜きん出ていました。
平家物語
一番心に残るアニメを挙げよ、と言われたら『平家物語』です。今のアニメはワンクールの3か月で消費されてしまう。ラノベやゲームに誘導するための「仕掛け罠」になっていて、それ自体の完成度が求められていない。原作が未完だからアニメも尻切れとんぼ。こちらの生きているうちに『ガラスの仮面』は終わるのだろうか。
だから『平家物語』、というわけではない。確かに原作は終わっているけれど、そこではなく、切り口が良かった。琵琶法師の少女を定点とし、その視点から時代の終焉を見つめ直す。視聴者を物語の内側に誘い込み、そこから見えるものでストーリーを進める。戦闘シーンは大幅に端折る。生きている人間たちにスポットを当てる。
京都アニメーションのスタッフが別スタジオを構えて作った作品。やはり、この人たちにはイマジネーションの世界を構築する力があると思う。
Do It Yourself!!
個人的に推しなのが『Do It Yourself!!』。パインジャムのオリジナルアニメ。AIが進化して人が働かなくても暮らせるようになった近未来。こういう設定だと「管理社会の中で犯罪係数がどうのこうの」と暗くなるのですが、いえいえ、違います。女子高生が部活でモノ作りをする話です。働かなくなっても、人は何かを作りたい。自分の手を動かして、汗をかいて、ヘトヘトになりながら、何かを作りたい。
最近のアニメには基本形があって「孤立→偶然の出会い→再結合」の展開をします。ワンクールで描く制限でしょうか。主人公は集団に馴染めず孤立している。そこに脳天気なトリックスターが現れ、その傍若無人に振り回されているうちに、主人公は自分の過去を回想し、失っていたものに気づき取り戻す。この神話的構造をしている。
『Do It Yourself!!』の主人公はぷりんのほうです。せるふではありません。何もかもが用意され満ち足りている。そんな世界にどこか違和感を持つぷりんは進学校の生活に溶け込めない。いつも窓際から外を眺めながら、自分からは飛び出せずにいる。
いろんなアニメがその解法を示している。「偶然の出会い」を変奏している。自力では脱出できない。自己責任の彼岸から「何か」がやってくる。それを待つしかない。今のアニメは息苦しいけれど、これが若者たちが置かれている状況なのだと思う。